スモールM&A案件は事業譲渡が多い理由について解説
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今回は「スモールM&A案件は事業譲渡が多いのはなぜ?」について、解説します。
企業買収を検討するなら、M&Aマッチングサイトへの登録は必須です。
サイトのソート機能で、今回は希望売却価格を「3,000万円以下」に絞りこんでみて下さい。
そうすると、ソートされた登録案件の殆どは、M&Aスキーム(譲渡形態の事)に「事業譲渡」と表示されているでしょう。
M&Aプロセス上、事業譲渡よりも株式譲渡の方が、簡便であり後者を中心に案件探索をされている方も多いでしょう。
しかし、事業譲渡案件ばかりでマッチング(アプローチ)を見送った経験はありませんか?
一般のM&A案件(ここでは売却価額1億円以上の案件とします)と比較し、スモールM&A案件、マイクロM&A案件おいては、事業譲渡スキームが多く、約6割以上がこのスキームを選択しています。
これは、スモールM&A・マイクロM&A特有のものと言えますが、なぜ、スモールM&A案件・マイクロM&A案件は、株式譲渡ではなく事業譲渡がM&Aスキームとして登録されているのでしょうか?
その主な理由は、
「スモールM&Aは、通常のM&Aに比べ、事業譲渡のメリットが大きいから」
です。
今回は、スモールM&Aにおいて、事業譲渡の方がメリットが大きくなる点にスポットを当て、「スモールM&A案件は事業譲渡が多いのはなぜ?」について、解説して行きましょう。
《参考記事》 |
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スモールM&A案件は事業譲渡が多い理由について解説
それでは、「スモールM&A案件は事業譲渡が多いのはなぜ?」の解説して行きます。
※解説の中に、参考記事のリンクも記載してます。併せてご覧ください。
そもそも事業譲渡とは?
まずは事業譲渡の定義を確認しましょう。
事業譲渡とは、企業の保有するある一部の事業を譲渡するM&Aスキームです。
事業を譲渡した側(売り手)はその代価を現金でもらい、事業を譲受した側(買い手)はその代価を現金で支払い、その事業を得るのです。
スモールM&A手続きの中で、最も多いスキームではありますが、株式譲渡に比べると若干複雑で手間も要します。
《参考記事》 |
事業譲渡における買い手のメリット
事業譲渡におけるメリットを、買い手側、売り手側に分けて解説します。
まずは、事業譲渡における買い手のメリットです。
《参考記事》 |
買収する事業・資産・人材などを選択できるから
事業譲渡では、買収する事業・資産・人材などを、自由に選択する事が可能です。
例えば、数店舗経営している飲食店の場合、採算店舗のみを選択する事や、ある企業の特殊技術やノウハウを持った部門のみ切り出すなど、一部の事業・資産・人材などを選別して1つの事業体として買収する事が可能です。
買い手側としては、欲しい部門とそうではない部門を切り分け、買収事業を自由設計できることが大きなメリットとなります。
しかし、定義のセッションでも述べた通り、事業譲渡は、株式譲渡に比べると若干複雑で手間も要します。
事業譲渡スキームは、ディールサイズが大きければ大きい程、買収事業の選定やPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション⇒簡単に言うと引継ぎ作業)に手間も時間もかかります。
一方、スモールM&Aにおいては、ディールサイズは小さく、買収事業の選定や引き継ぎ作業のボリュームも少なくなります。
そのため、PMIについても、早いものであれば、1ヶ月で完了させることも十分に可能なのです。
これに伴い、スモールM&Aにおいては、通常のM&Aプロセスよりも手間や時間がかからず、尚且つ、買収事業を自由設計可能な事業譲渡スキームが好まれる傾向が強くなるという訳です。
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負債を引き継ぐ必要がないから
事業譲渡スキームでは、金融機関からの借入など、負債を引き継ぐ必要はありません。
事業譲渡スキームの性質上、買収事業を自由設計できるという事は前述の通りで、引き継ぎたくない負債も、譲渡側に置いて行く事も可能です。
小規模事業者が売り手である場合、売却理由として、事業譲渡対価を負債に充当する事を目的としているケースも多く、これも事業譲渡スキームがスモールM&Aに流れる一つの理由となっています。
しかし、何度もご説明している通り、「事業譲渡スキームは、買収事業を自由設計可能」なので、買収する事業に強く紐づいている負債などは、引き継ぐことを前提にM&A市場に出されている案件もあります。
これについては、売り手との条件交渉となるので、慎重な対応を心がけましょう。
また、「屋号」を続用する場合は、注意が必要です。
※「屋号の続用」と「免責登記」については、また別の機会に解説します。
《参考記事》 |
把握していない買収リスクを回避できるから
M&Aプロセス上、基本合意を締結した次のプロセスは、デューデリジェンス(買収監査)です。
このプロセスでは、買収する企業や事業のリスクの洗い出しを行う訳ですが、時間や人員にも制限があります。
その中で、全てを可視化する事は難しく、何かしらのリスクは背負う可能性があります。
株式譲渡スキームの場合、会社ごと買収する事になるため、見えざるリスクを包括的に引き継ぐ事になります。
一方、事業譲渡の場合、ある一部の事業体を買収する事になるため、事業の引き渡しを受ける前のリスクは、売り手側に残して譲受する事が可能です。
特に、小規模事業の場合、大企業と比べ、税務・財務会計、法務、労務、その他の内部統制に力を入れておらず、その分、買収リスクも高くなります。
これを回避する目的で、小規模事業の事業承継、つまりスモールM&Aにおいては、事業譲渡スキームが選択される訳です。
買い手側のメリットとしては、最後に記載しましたが、これが事業譲渡スキームも最大のメリットと言えるでしょう。
《参考記事》 |
事業譲渡における売り手のメリット
次は、事業譲渡における売り手のメリットについて解説します。
《参考記事》 |
選択と集中が可能だから
スモールM&Aにおいて、事業譲渡案件がM&A市場に出回る第一の理由となっているのは、この選択と集中です。
企業体として様々な事業を営んでる会社は珍しくありません。
サイドビジネスを売却し、その対価を本業に集中させたり、新規事業の資金に充てるなど、M&A戦略も多様化しており、売り手の大きなメリットなっています。
サイドビジネスの売却の場合、当然規模は小さく、M&A市場に投入する際の希望売却価額も小さくなります。
つまり、スモールM&A案件(時にはマイクロM&A案件)がM&Aマッチングサイトに登録される事につながる訳です。
特に、不採算事業を清算すると、撤退費用がかかりますが、売却に成功すれば、譲渡対価が手に入ります。
M&A市場とは、まさに「捨てる神あれば、拾う神あり」と言ったところでしょう。
個人事業も売却可能だから
知らない方が多いのですが、個人事業も売却可能なのです。
つい10年ほど前は、個人事業を辞める時は、廃業という選択肢しかありませんでしたが、M&Aマッチングサイトが頭角を現すにつれ、個人事業のM&Aも珍しくなくなって来ています。
個人事業の規模なので、ディールサイズも小さく、スモールM&A案件(どちらかと言うとマイクロM&A案件)が市場に出回る一因となっています。
更に、個人事業は法人ではないため、事業譲渡(営業譲渡)スキームを選択する事になります。
これもスモールM&A案件における、事業譲渡スキームが占める割合を押し上げる要因となっているのです。
個人事業を親族内で承継できない場合、第三者に承継できるという事は、売り手にとって大きなメリットです。
個人事業を廃業すれば費用がかかりますが、売却出来れば、譲渡対価として現金が入ります。
マイクロM&A案件は、個人買収者(個人で事業を買収し独立を検討している人。つまり個人M&A希望者)に好まれる傾向にあるため、個人事業の売却案件は近年、人気案件になりつつあります。
予定していなかった退職金がもらえると考えれば、M&Aを検討しない手はないでしょう。
《参考記事》 |
まとめ
以上、「スモールM&A案件は事業譲渡が多いのはなぜ?」を、ご説明しました。
スモールM&Aにおいて、事業譲渡スキームが多く利用される要因は、それを利用するメリットの大きさにあり、
買い手のメリットは、
- 「買収する事業・資産・人材などを選択できるから」
- 「負債を引き継ぐ必要がないから」
- 「把握していない買収リスクを回避できるから」
であり、売り手のメリットは、
- 「選択と集中が可能だから」
- 「個人事業も売却可能」
という事でした。
冒頭でもお話した通り、M&Aプロセス上、事業譲渡スキームは、手続きが煩雑となるため、株式譲渡の方が好まれる傾向にあります。
そのため、事業譲渡案件を敬遠する方もいます。
しかし、スモールM&A(またはマイクロM&A)を成功させるには、事業譲渡案件も視野に入れて案件探索を行った方が、成約確率は間違いなく高まります。(※実際、スモールM&Aアドバイザーである筆者も、株式譲渡よりも事業譲渡の方が成約実績が多いのも確かです。)
この記事を閲覧いただいたのを機に、事業譲渡案件にもアプローチをしてみては?
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
他の関連記事もご覧いただけますと幸いです。
また次の記事でお会いしましょう。
それでは。
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