会社を安く買い叩かれないための注意点の解説
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前回の事業承継・M&Aを失敗しないための注意点 第7回では「M&Aにおける表明保証」を解説しました。
《前回記事》 |
今回は会社を安く買い叩かれないための注意点について、解説します。
M&Aでは、売り手は「より高く売りたい」、買い手は「より安く買いたい」という心理が当然にあります。
しかし、お互いのエゴをぶつけ合っているだけでは、交渉は進むことはなく、M&Aの成約には至りません。
主張には「根拠」が必要であり、「根拠」のない条件交渉はまとまらないのです。
M&Aにおいては、売り手側の「売りたい」という希望ありきで、買い手の「買いたい」と言う希望が発生するわけで、まずは売り手側より「この金額で売りたい」という売却希望価額に何かしらの「根拠」を提示しなければなりません。
この「根拠」が明確にならないがために、買い手の納得感を得られず、会社を安く買い叩かれてしまうのです。
そうならないためにも、M&A交渉上「先攻」とも言える売り手より、買い叩かれないための対策を立てなければなりません。
では、会社を会社を安く買い叩かれないためにはどうしたら良いのでしょうか?
今回は、「会社を安く買い叩かれないための注意点」を解説して行きます。
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会社を安く買い叩かれないための注意点
会社を安く買い叩かれないための注意点を、解説して行きます。
※解説の中に、参考記事のリンクも記載してます。併せてご覧ください。
自社の状況をフレームワークで分析
会社や事業を高く売却するには、対象となる会社や事業を、どれだけ魅力的な売却案件であるかを買い手に訴求できるかにかかっています。
財務上、収益が出ており内部留保も潤沢であれば、買い手も優良案件と判断し、即買収準備に入りますが、売却案件の魅力度は数字からのみで計測されるものではありません。
買い手は、売り手企業の状況や将来性など総合的な見地から買収するか否かを判断します。
魅力的な案件であるという事を理解してもらうためには、フレームワークを活用した分析は非常に効果的です。
なぜならば、フレームワークを活用した分析結果で、M&Aによるシナジー効果を買い手に認識してもらい、自社を高値で買収してもらうよう働きかける事が可能だからです。
フレームワークを活用し、自社の魅力を買い手に伝える事が、安く買い叩かれないための第一歩となるのです。
《参考記事》 |
シナジー効果をアピール
上記、フレームワーク分析を行う事で、自社の状況を深く理解できたことでしょう。
次にやる事はシナジー効果をアピールする事です。
M&Aにおけるシナジー効果は、買い手が最も期待するところで、買収における醍醐味とも言えます。
買い手側もシナジー効果を自社でも考察した上で買収を検討しますが、売り手側からも自社を買収する事により期待できるシナジー効果を予め提示すべきです。
なぜならば、買い手側が発見・想定していなかったシナジー効果をアピールする事で、案件評価を上げる可能性があるからです。
これについては、各買い手候補の状況にもよるため、何が買い手の心にヒットするかは一概には言えません。
そのため、想定し得るシナジー効果を数多く列挙しておき、各買い手候補に提示できるものを予め準備しておくことが重要です。
買い手との交渉の中で、新たなシナジー効果を発見する事も珍しい事ではなく、交渉が活性化する事で、M&Aの成約に一気に近づく事も期待できます。
《参考記事》 |
ネガティブ要因も明確に伝える
フレームワーク分析は、シナジー効果等、自社のポジティブ要因のみを洗い出すものではありません。
分析を行う事で、ネガティブ要因も見えてきます。
可視化されたネガティブ要因は当然、買い手へも提示しなければなりません。
売り手としては、M&A交渉を進めるうえで、売却価額の引き下げや、不利な条件を提示されるような情報も買い手に共有しなければならい事は多々あります。
それを嫌がり交渉が少しでも有利になるようにと、虚偽の情報を申告しては決していけません。
特に、デューデリジェンス(買収監査)時に監査人から受けたインタビューの内容は、デューディリジェンス(買収監査)レポートにも記録されています。
当然の話ですが、一度嘘をつくと後々つじつまが合わなくなるため自分で自分の首を絞める結果となってしまいます。
確かに売り手側としたら、公表したくない情報もあるでしょうが、買い手側からしたら、今後自分の経営する事業のリスクは完全に把握しておきたいものです。
これについては、勇気を出して買い手に正確な情報をシェアしなければなりません。
特に表明保証条項違反により損害賠償を受けることは、売り手にとって最大のリスクと言えますので、この点は要注意です。
むしろ、ネガティブな内容を積極的に買い手に開示する事で好感を受け、交渉条件を譲歩してもらえることさえあります。
ネガティブな情報であっても、虚偽申告は決してせず、買い手と監査人に正確な情報を伝える事が重要です。
《参考記事》 |
業績が良いタイミングを見計らう
会社は生き物です。
業績の良い時期、そうでない時期は当然あります。
現状、自社の損益計算書・貸借対照表はどうでしょうか?
買い手は、過去の実績よりも今後の業績予想に目を向ける傾向にあります。
しかし、一番重要なのは「今」です。
現状の数字がどうなっているかに焦点を当てて、今がピークなのか?それとも来期の方が業績が上がりそうなのかなど、考察する必要があります。
業績が良いタイミングで会社を売却に出すことは、安く買い叩かれるリスクを軽減するだけではなく、M&Aの成約率を高めることが可能です。
なぜならば、買い手候補も多く集まるからです。
優良案件には買い手の応募が多数となるので、最終的には入札となるケースがあります。
M&A交渉上、売り手側とすれば、理想の形とする事ができます。
この状況にする事は、なかなか難しいですが、売却に出すタイミングは重要です。
自社の財務内容を再度分析し、どのタイミングで売却するのが良いのかを見極めましょう。
《参考記事》 |
会社売却のための早期準備の徹底
会社や事業の売却交渉を進めたいのであれば、まずは売却するための準備が必要です。
なぜならば、M&Aアドバイザーに依頼するにせよM&Aマッチングサイトに独自で掲載するにせよ、会社や事業を売り物にしなければならないからです。
準備としては、
・事業承継・M&Aに必要な資料を準備しておく。
・自社の財務内容を把握しておく。 ・自社におけるビジネスモデルの再確認、業務などの棚卸しをしておく。 ・自社のビジネス上の強み・弱みを把握してく。 ・自社の経営上の問題点、売却する事によるリスクを把握しておく ・株主の賛同を得ておく |
などが、挙げられます。
M&Aマッチングサイトで買い手を募集する際は、これらをノンネームシートとしてサイトに登録し、買い手募集します。
しかし、上記で挙げたものの準備がおろそかになると自社の内容が何も伝わらないものとなり、買い手から大幅な値下げ交渉をされる可能性出てくるのです。
売却できるならまだしも、買い手がつかない恐れさえ出てきます。
まずは、準備すべきものをそろえ自社を「商品化」しなければならないのです。
準備すべき資料やノンネームシートについては、M&Aアドバイザーに相談しながら準備及び作成することを推奨します。
《参考記事》 |
まとめ
以上、事業承継・M&Aを失敗しないための注意点 第8回「会社を安く買い叩かれないための注意点」を、ご説明しました。
会社を安く買い叩かれないためのポイントは、会社の全てを「可視化」する事が重要と言えます。
買い手は、買収する会社の全てを把握したいという心理が働くものです。
全ては難しいにしても、ポジティブ要因、ネガティブ要因など検討材料の根幹となるものが明確に理解できない会社は、間違いなく安く買い叩こうとします。
詰まるところ、「内容がよくわからないものは、言い値で買いたくない」というのが本音なのです。
会社を安く買い叩かれないためには、全ての情報を開示し、尚且つ自社の強みをアピールする事が重要なのです。
この点、経営者自身で行うのではなく、M&Aアドバイザーに相談する事をお奨めします。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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