中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について

M&Aに関するトラブルと回避策

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小規模M&Aアドバイザーが徹底解説

M&Aに関するトラブルと回避策! 小規模M&Aアドバイザーが徹底解説!

近年、中小企業のM&Aが活発に行われるようになり、大企業だけではなく、中小零細企業の経営者、個人事業主などにも身近なものとなってきました。

それも、中小M&Aに特化したM&Aアドバイザー(スモールM&Aアドバイザーなど)や、M&Aプラットフォーマー(M&Aマッチングサイトなど)が、多くの支援を行うようになったことが、大きな要因であり、中小企業庁からも「中小M&Aガイドライン」の策定や、「M&A支援機関に係る登録制度」の制定、各都道府県における「事業承継引継ぎ・支援センター」の設置、また、中小企業M&Aを対象とした「事業承継・引継ぎ補助金」の支援なども大きな後押しとなっております。

【参考URL】

中小M&Aガイドラインとは?小規模M&Aアドバイザーが徹底解説

M&A支援機関登録制度とは?小規模M&Aアドバイザーが徹底解説

中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言とは?

続 中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言とは? 

続々 中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言とは? 

弊社は、「M&A支援機関登録制度」に、登録されたM&A支援専門家です。

登録支援機関データベース

中小企業庁「M&A支援機関に係る登録制度」への登録について

中小M&Aガイドライン(第3版)遵守の宣言について

これに伴い、中小M&Aの年間成約件数も増加傾向にあるわけですが、これに比例し、M&Aに関するトラブルも頻発されるようになりました。

中小企業庁からも、中小M&Aに関するトラブルについての注意喚起を促しており、トラブルを未然に防ぐための対策の実施と情報発信しております。

今回は、その中でも「M&A支援機関登録制度」のホームページで掲載されているトラブルについてに焦点をあて、トラブルケースの回避策を解説して行きます。

M&Aに関するトラブル

M&Aに関するトラブルとは?

まずは、「M&A支援機関登録制度」のHPにある「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシをご覧ください。

▼「M&A支援機関登録制度」ホームページ
「M&A支援機関登録制度」
「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシ
「M&Aに関するトラブルにご注意ください」

事例ケースとして、

  1. クロージング後、個人保証が解除されなかった事例
  2. 譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているものの、履行されなかった事例

の2つが掲載されています。

この2点は、私たちM&Aアドバイザーも細心の注意を払いながらM&Aプロセスを遂行しなければいけない論点のひとつです。

この事例について、個別に解説して行きましょう。

M&Aに関するトラブル事例 ケース1 クロージング後、個人保証が解除されなかった事例

「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシのひとつ目事例としては、

ケース1 クロージング後、個人保証が解除されなかった事例

クロージング後、売り手経営者の個人保証について、売り手から買い手に何度依頼しても契約に基づいた意向がなされなかった。その上で、買い手が売り手の現金預金等の資産を回収したが、必要な事業資金の送金がなされず、売り手は倒産。この結果、経営者保証が残っていた売り手経営者が債務を負う事となり、個人破産に至ってしまった。

『「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシ』より引用

とありますね。

ざっくりとした記載となってますが、この事例に少々脚色してストーリーだててみますと、

  1. 売手・買手間で、株式譲渡契約を締結を実施。
  2. 株式譲渡契約書には、株式譲渡後、売り手に紐づいていた対象会社(売り手が株主だった企業のことで、現在は買い手が株主)の借入金の個人連帯保証を、解除(親会社からの資金投入した上での繰上げ完済や他金融機関からの借換などで一旦、借入金を解消する方法が一般的)するという約束を結んでいた。
  3. しかし、買い手は約束を破棄し、売り手の個人連帯保証を解除してくれない。
  4. その後、買い手が対象企業の資金を引き揚げたため倒産
  5. 対象会社の倒産により、金融機関は個人連帯保証の紐づいた売り手に弁済を請求。
  6. 売り手に弁済資金がなく個人破産することになってしまった。

と言った話になりますね。

この事例の内容だけ見ると、買い手はかなりの悪意を感じますね。

売り手の個人連帯保証を解除しないだけではなく、対象会社の資金まで回収してしまい、倒産に追いやった。

そして、売り手を自己破産させる。

最初から売り手を自己破産に誘導するシナリオでも描いていたかのような話ですね。

ドラマのようなストーリーですが、実際にこれに似た事例はM&Aアドバイザーである私の耳にも入ってきています。

第三者承継(M&Aのこと)を検討している方が、このような事例を目にしてしまうと、ほとんどの方は、承継を諦めてしまうのでは?

そこで、「M&Aに関するトラブル事例 ケース1」の回避策を次のセクションで解説します。

M&Aに関するトラブル事例 ケース1の回避策 クロージング後、個人保証が解除されなかった事例

個人連帯保証の解除自体をクロージング条件にする

この方法は、譲渡契約と同時に株式譲渡代金の決済と株式の譲渡をするのではなく、クロージング条件、つまり成約するために必要となる条件が履行されたときはじめて、成約(つまり譲渡契約の成立)とするスキームと取るということです。

この方法を時系列でお話しすると。

【株式譲渡契約の場合】

  1. 株式譲渡契約の締結  :契約日と成約日を別の日とする
  2. クロージング条件の履行:ここでは個人連帯保証の解除が条件であり、これを履行
  3. 株式譲渡契約の成約  :クロージング条件が履行されたため、株式譲渡と譲渡代金決済

となります。

また、当然のことながら、「クロージング条件の履行」がなされなかった場合は、この譲渡契約は不成立ということになります。

みなさんにお伝えしたい事は、「譲渡契約日と成約日は、必ずしも一致しない」ということが、あまり知られていないということです。

「譲渡契約=日成約日」だけではなく、「譲渡契約日≠成約日」とする方法もあるということも、知っておいてください。

契約書の条件に個人連帯保証の解除ができなかった場合の補填条件を盛り込む

ケース1ですが、買い手側に悪意があり、故意に個人連帯保証を解除してくれないということであれば、履行を求めるために弁護士に相談することもあるかと思います。

しかし、小規模M&Aでこのようなケースが起こってしまうのは、単純に買い手の信用力がなく、売り手の個人保証を解除ができないパターンもあります。

特に1,000万円前後でM&A取引される場合、買い手が独立するために会社買収をすることも珍しくありません。

この場合、融資先の金融機関としては、つい先日まで、いち勤め人だった人間に個人連帯保証を変更することは当然のことながら、躊躇してしまいますよね。

こう言った事で、個人連帯保証の解除が不可となってしまうのです。

これの対策としては、「契約書の条件に個人連帯保証の解除ができなかった場合の補填条件を盛り込む」ことをお奨めします。

例えば、

  • 買い手に他金融金からの借り換えを求める事ができる
  • 万が一債務不履行が起きてしまった場合、損害賠償を求める事ができる

などの、代替案を盛り込むのです。

いずれにせよ、結果、個人連帯保証が解除する事が目的となるので、他の方法も模索しておき契約を締結する事が重要なのです。

事前に金融機関に相談しておく

私見では、この方法が一番セーフティかなと考えています。

前のセクションで解説した話のトラブル要因としては、買い手が売り手の個人連帯保証を解除してあげようとしてもできなかったという部分にあり、これを先に払拭しておく方法はやはり、M&A取引により、個人連帯保証を解除又は、変更したい旨を事前に金融機関に相談しておくことが一番手っ取り早いです。

もちろん、売り手・買い手間で締結する秘密保持契約の観点から、交渉当初より相談する事はなかなかできませんが、M&A契約における中間契約となる「基本合意書の締結」後であれば、事前相談のタイミングとしては最善です。(金融機関側でも知っておきたいタイミングかなと思います。)

もちろん、交渉の中で、「基本合意書締結後は、一緒に(売り手・買手ふたりで)金融機関に相談に行きましょうね」との申し合わせは必要ですね。

事前相談により、金融機関からの事前審査や必要書類の提出などが求められるので、担当者の指示に従ってください。

ここで金融機関側からNGが出たならば、他の方法を考えるか条件を変更する、またはお見送りとなりますが、少なくともケース1のようなトラブルは回避できます。

経営者保証ガイドラインをチェックしておく

まずは、経営者保証ガイドラインを見てみましょう。

【経営者保証ガイドライン】とは?

中小企業の経営者による個人保証には、資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっている等、中小企業の活力を阻害する面もあり、個人保証の契約時および保証債務の整理時等において様々な課題が存在しております。
この「経営者保証に関するガイドライン」は、それらの課題に対する解決策の方向性を取りまとめたものです。

『全国銀行協会HP』より引用

経営者保証ガイドラインとM&Aとの接点としては、

事業承継を行う際に経営者保証が障害となっている場合、要件を満たせば、これ自体を解除できる可能性がある

ということです。

その要件も見てみましょう。

経営者保証ガイドラインの3要件

内部又は外部からのガバナンス強化により 3要件を将来に亘って充足する体制が整備されていることが必要

  • 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
  • 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
  • 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

『中小企業庁HP「経営者保証」』より引用

上記3要件の全てまたは一部を満たせば

  • 事業者は、経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある
    すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性がある
  • 金融機関は、要件の充足度合いに応じて、経営者保証を求めないことや保証機能の代替手法(停止条件付保証契約※等)の活用を検討停止条件付保証契約とは、中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)に違反しない限り保証債務の効力が発生しない旨の契約

『中小企業庁HP「経営者保証」』より引用

となります。

中小企業が要件を満たすことはなかなか難しいかも知れません。

しかし、

  1. 個人連帯保証があるがためにM&A取引ができない。
  2. ゆえに、会社をたたむしかない。
  3. 結果、金融機関側の融資量が減る。または債権回収懸念が高まる

などの、金融機関側にもかかわるということを理解いただければ、僅少ながらも可能性はあります。

前のセクションで解説した「事前に金融機関に相談しておく」と絡めて、一度、金融機関に相談することを推奨いたします。

M&Aに関するトラブル事例 ケース2 譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているものの、履行されなかった事例

次は、「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシのふたつ目の事例事例を見てみましょう。

ケース2 譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているものの、履行されなかった事例

M&Aの成立時点での譲渡対価は低額であったが、成立後一定期間後に相当程度の退職慰労金が支払われる契約を結んでいた。

しかし、契約に定めえる期間が訪れても退職慰労金が一向に支払われない。

『「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシ』より引用

とありますね。

ケース1同様、こちらもざっくりとした記載となってますが、この事例に少々脚色してストーリーだててみますと、

  1. 売手・買手間で、株式譲渡契約を締結を実施。
  2. 株式譲渡対価は、譲渡希望価額よりも、だいぶ低額で支う代わりに、売り主が対象会社から退職する際に相当程度(例えば、株式譲渡対価が低額のかわりに退職慰労金を当初の譲渡希望価額よりも多めに払うとかなんとかで、条件を提示した)支払うという約束を結んでいた。
  3. しかし、買い手は約束を破棄し、売り手が退職しても退職慰労金を払おうとしない。

と言った話になりますね。

これについても、ケース1同様、買い手側の悪意を感じますし、こういった事例はよく聞きますね。

しかし、ケース2の場合、売り手にも責任があるとうのが私の見立てです。

と、これだけでは、皆さんピンときませんよね。

ということで、「M&Aに関するトラブル事例 ケース2」についても回避策を次のセクションで解説します。

M&Aに関するトラブル事例 ケース2の回避策 譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが株式譲渡契約の条件となっているものの、履行されなかった事例

そもそも退職慰労金の条件を盛り込まない

これが一番ですね。

買い手側の趣旨としては、株式譲渡代金を実質的に分割払いとし、また退職慰労金の資金は対象会社が用意するもので、買い手側キャッシュアウトの負担を軽減したいというものです。

買い手の立場としては分かりますが、退職慰労金が本当に支払われるかは不確定となるので、非推奨です。

と言った事もあり、「そもそも退職慰労金の条件を盛り込まない」ことを推奨します。

または、株式譲渡契約時に退職することとし、株式譲渡代金と退職慰労金の決済を株式譲渡と同時に履行してもらうようにして下さい。

アーンアウト条項に注意

まずはアーンアウトとは何かです。

アーンアウトとは、譲渡代金の決済スキームの一つで、譲渡代金を一括で支払うのではなく分割払いで行う取引契約のこと。

例えば、M&Aの実行後、ある一定の条件が達成された場合、取り決めに応じた資金を追加で決済するなどです。

よくあるケースとしては、譲渡契約成約後の売上高、営業利益などに連動して、業績給が発生するなどですね。

これを条件とすることを「アーンアウト条項」というのです。

歩合制のようにすることで、売り手も当初見込んでいた譲渡代金よりも多くもらえる可能性があるため、経営に対するモチベーションも高まります。

買い手側も一括で支払う必要がなく、資金繰りも楽になります。

一見両社にとってメリットしかないように見えますが、本当に歩合給は貰えるのでしょうか?

対象会社の業績は上がるのでしょうか?

売り手に事故や病気が発症したら?

不安要素しかありませんよね?

この条項は、買い手側から振り出される事が一般的です。

なぜならば、買い手側のリスクヘッジの要素が強いからです。

全てを否定するわけではありませんが、調子のいい事を言われて、アーンアウト条項ありの契約書にサインする事は、売り手側にとってはハイリスク・ハイリターンとなるため、慎重に対応するようにしましょう。

M&Aに関するトラブル事例の回避策の総論

M&Aアドバイザーをしていると切に思うのですが、売り手・買手当事者間でM&Aを成約させることをひてはしませんが、何か気になることがあれば、必ず弁護士・税理士などの専門知識のある方に相談することは必須です。

「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシの2ページ目にも記載されていますが、色々と相談窓口も紹介されています。

「M&Aに関するトラブルにご注意ください」の案内チラシ(再掲)
「M&Aに関するトラブルにご注意ください」

少しでも不安要素があれば、必ず各種相談窓口に連絡する事にしましょう。

まとめ

以上、「M&Aに関するトラブルと回避策」についての解説でした。

M&Aトラブルと聞くと恐ろしく感じ、M&Aに対してネガティブな印象を持ってしまうことでしょう。

しかし、会社や事業を引き継ぐにはM&Aは避けて通れない場合が多くそのためには、常に正しい知識を持っておく必要があります。

今回の記事をご覧いただくことで、M&Aトラブルの回避につながり、売り手様・買い手様ともにお幸せになっていただけましたら幸いでございます。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

中小企業のM&Aは、売り手様・買い手様の一期一会のご縁によりご成約されるものです。

ご覧いただいている方に、良縁がありますよう祈念させていただきます。

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