続 中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言
小規模M&Aアドバイザーが徹底解説
中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言を見てみよう! 小規模M&Aアドバイザーが徹底解説!
前回、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言と、遵守事項である支援の質の確保・向上に向けた取組(1~6)」について解説しましたが、今回はその続きとして、「M&A プロセスにおける具体的な行動指針(7~23)」について解説します。
前回も是非、ご覧下さい。
弊社は、「M&A支援機関登録制度」に、登録されたM&A支援専門家です。 |
今回も、「M&A支援機関登録制度」に登録しているM&A支援専門家が遵守している事項の内容と、それに対する解説をして行きますが、遵守事項は非常に長いので何度かに分けて解説して行きます。
それでは、解説をはじめて参ります。
中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言
中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言とは?
少々、前回のおさらいです。
まずは、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言」とは何かについて見ていきましょう。
「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言」とは、
「M&A支援機関(主にM&Aアドバイザーのこと)」が、「M&A支援機関登録制度」に登録・継続する際、「中小M&Aガイドライン(2025年1月現在 第3版)」に基づいた事項を遵守宣言すること |
です。
M&A支援機関登録制度の登録・継続には、もちろん審査もあり、M&A支援専門家は、ガイドラインを宣言するだけではなく当然、遵守する事が求められ、これに反したことを行えば、本制度からの登録取り消しという罰則もあります。
こういった厳しい規定もあることから、本制度に登録されているM&A支援専門家は信頼性・信用性もあり、消費者がM&Aアドバイザーを選定する際の選定基準ともなっています。
M&Aアドバイザーが、「M&A支援機関登録制度」に登録されているか否かは、「M&A支援機関登録制度データベース」で確認ができます。
▼M&A支援機関登録制度データベース |
また、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言」は、HPまたは会社概要資料に必ず掲載されているので、M&Aアドバイザーを選定する際には、確認をするようにして下さい。
▼弊社遵守宣言 |
※もしも記載がなければ、本制度の登録がないまたは、登録していても、本制度を遵守していないという事になりますので、M&Aアドバイザー選定の際にはご注意ください。
中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項
次に、本制度に登録されているM&A支援専門家が遵守宣言している「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項」の目次を見ていきましょう。
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と、6つのセクションに分かれております。
各セクション、いくつかの遵守事項があり、非常に読むのも大変です。
前回は、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項・支援の質の確保・向上に向けた取組(1~6)」について解説しましたが、今回は、「M&A プロセスにおける具体的な行動指針(7~23)」について、解説して行きます。
前回も是非、ご覧下さい。 |
※それ以降は順次投稿して行きたいと思います。
中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項・M&A プロセスにおける具体的な行動指針(7~23)
では、実際の「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項・支援の質の確保・M&A プロセスにおける具体的な行動指針(7~23)」 を、見ていきましょう。
●M&A プロセスにおける具体的な行動指針 ◆意思決定 7 専門的な知見に基づき、依頼者に対して実践的な提案を行い、依頼者のM&Aの意思決定を支援します。その際、以下の点に留意します。 · 想定される重要なメリット・デメリットを知り得る限り、相談者に対して明示的に説明します。 · 仲介契約・FA契約締結前における相談者の企業情報の取扱いについても、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負っていることを自覚し、適切に取扱います。 8 仲介契約・FA契約締結に向けて行う広告・営業については、以下の規律を遵守した上で、適切に実施します。※なお、広告・営業の実施にあたっては、職業倫理の遵守が求められるほか、仮に、過去の対応状況や頻度等に照らして、広告・営業先の中小企業の事業活動や経営者の生活に多大な支障を与えるような過剰なものである場合には、民法上の不法行為責任を負う可能性もあることに留意する。· 広告・営業先からM&Aの実施意向がない旨、仲介契約・FA契約を締結しない旨又は引き続き広告・営業を受けることを希望しない旨の意思(以下「停止意思」という。)を表示された場合には、停止意思を拒まず、ただちに広告・営業を停止します。 ◆仲介契約・FA契約の締結 10 契約締結前に、依頼者に対し仲介契約・FA契約に係る重要な事項(以下(1)~(17))を記載した書面を交付する等して、明確な説明を行い、依頼者の納得を得ます。 11 手数料・提供する業務の内容や相手方の手数料に関する事項については、以下に沿って説明します。 12 上記10,11の説明は、契約を締結する権限を有する者(個人の場合には、当該個人。法人の場合には、代表者又は契約締結について委任を受けた者。)に対し行います。 13 上記10,11の説明の後、契約締結について適切に判断するために、依頼者に対し、十分な検討時間を与えます。 ◆バリュエーション(企業価値評価・事業評価) ◆譲り受け側の選定(マッチング) 16 譲り渡し側からの同意については、開示先となる候補先ごとに個別に同意を取得します。 17 秘密保持契約締結前の段階で、譲り渡し側に関する詳細な情報が外部に流出・漏えいしないよう注意します。 ◆交渉 ◆デュー・ディリジェンス(DD) ◆最終契約の交渉・締結 21 最終契約後・クロージング後に当事者間での争いに発展する可能性があるリスクについて、最終契約の締結までの調整の実施や依頼者への説明を行います。具体的には、特に下記の対応を実施します。 22 最終契約の締結に当たっては、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促します。 ◆クロージング |
記載事項を順を追って解説します。
意思決定(7~8)
まずは、「意思決定」のセクションから見ていきましょう。
このセクションで肝となる部分は、「8」の記載です。
「仲介契約・FA契約締結に向けて行う広告・営業」についての記載となっています。
長々と記載がありますが、要するに、M&A業者が、しつこい営業(テレアポやメール、DMなど)はしてはいけないし、M&Aの勧誘にも係わらず、違う目的の営業であるようなことを説明し、誤認させてはいけない。
ましてや、事実と異なる財務情報の提供、高額で売却できるや、M&A成立の可能性や条件についてが不確かなものにもかかわらず、確定的な意見をお客様にはしませんという内容となっています。
なぜ、この部分にスポットを当てたかというと、これらに反した営業活動をしているM&A業者も多く存在し、当然のことながら信用ができないからです。(詐欺まがいの可能性もあります。)
記事をお読みいただいた方には、こういったM&A業者には、注意していただきたいと思い、お話ししましたが、もしも、こういった営業活動をしてくるM&A業者を見かけたら、以下までご連絡ください。
▼M&A支援機関登録制度・情報提供受付窓口 情報提供受付窓口 |
M&A支援機関の運営として、不適切な行動をしているM&A業者の情報提供を、中小企業庁側で受け付けています。
不審なM&A業者を見かけたら迷わず連絡し、悪徳業者の排除にご協力いただけますと幸いです。
仲介契約・FA契約の締結(9~13)
次に、「仲介契約・FA契約の締結」に、ついてです。
このセクションも非常に長いですが、非常に重要な事が記載せれているので、記載事項はしっかりとご覧いただきたい部分です。
また、M&Aアドバイザーとの業務委託契約(つまり、M&Aに係わるアドバイザリー契約)を締結する際、重要事項説明書も一緒に説明を受けます。
当セクションの内容は、重要事項説明書において、記載事項の中核となる内容となるため、是非、頭に入れておいていただきたい内容ともなっています。
まずは、仲介契約・FA契約の違いについて見てみましょう。
◆仲介契約 仲介者は、M&Aの当事者双方から依頼を受けます。依頼者のM&Aの相手方(候補先を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供します。また、依頼者からのみならず、相手方からも手数料の支払を受けることが通常です。 M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできないものの、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し助言や調整を行います。◆FA契約 ファイナンシャル・アドバイザー(以下「FA」といいます。)は、M&Aの当事者の一方のみから依頼を受けます。依頼者のM&Aの相手方(候補先)に対して、依頼者に対して提供するものと同様の業務を提供することはありません。 依頼者からのみ手数料の支払を受け、相手方から手数料の支払は受けません。 M&Aの当事者の一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。 |
まずは、これがM&Aアドバイザーとの業務委託契約の前提となる内容となります。
仲介契約かFA契約かは、M&Aアドバイザーが、どういった立場でサポートしてくれるかという重要な部分となりますので、必ず確認するようにしてください。
また、専任条項につていても非常に重要です。
業務委託契約書に専任条項があるということは、「専任媒介契約」となるということで、契約書を締結したM&Aアドバイザー以外とは、業務委託契約を締結しない(他のM&Aアドバイザーには業務を委託しない)という事になります。(もちろん、M&Aアドバイザーに不満があれば解約はできます。)
「専任」か「非専任」については、それぞれメリット・デメリットも存在しますが、この点も「仲介」・「FA」と同様に重要な部分となりますので、必ず確認しましょう。
次は、M&AアドバイザーへのM&A報酬(つまり、手数料のこと)です。
M&AアドバイザーへのM&A報酬は、ある一定の相場感はあるものの、各々異なっています。
M&A報酬の種類を例を挙げると、
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などがあります。
また、報酬の算定方法と条件については、
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などがあります。
冒頭お話した通り、各M&Aアドバイザーによって料金体系は異なりますので、これについても要確認です。
次は、「テール条項」です。
テール条項とは、
テール条項とは、業務委託契約期間が終了した後も、M&A報酬を請求する事があり得るという事を記載した条項のこと |
です。
例えば、売り手・買い手が共謀し、報酬の支払いを逃れるためM&Aアドバイザーを通さず、直接M&Aを成約させることも可能と言えば可能です。
これを防止するために記載されるのが、テール条項です。
この行為が明るみに出た場合は、当初約束していたM&A報酬を請求されることになります。
テール条項の期間は、2年程度とされることが一般的ですが、業務委託契約書上、直接取引は禁止されていますので、注意しましょう。
その他の部分については、ご覧いただければわかる内容となりますが、最後に1点だけ、解説いたします。
「13」の部分。
13 上記10,11の説明の後、契約締結について適切に判断するために、依頼者に対し、十分な検討時間を与えます。 |
ここも非常に重要な事項です。
業務委託契約書については、事前にM&Aアドバイザーから依頼者に送付し内容を確認いただくことや、契約内容の説明後、検討時間を与える必要があり、その場で契約締結を即決させる行為は禁止されています。
契約締結の即決を求めてくるM&Aアドバイザーがいたとしたら、これも注意が必要です。
必ず検討期間を十分にとり、熟考した上で、業務委託契約書にサインするようにしましょう。
バリュエーション(企業価値評価・事業評価)(14)
企業価値評価・事業評価についても、算定方法やその根拠などの説明を受けることになります。
評価方法としては、
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が、ありますが、一般的に中小企業のM&Aにおいては「年買法」により評価します。
年買法とは、
企業価値評価方法の一つであり、評価対象企業の時価純資産にのれん(営業権)として、一般的には営業利益の複数年分(1〜5年分)を加算して企業価値を算定する評価方法のこと |
です。
ここで注意していただきたい点は、企業価値評価・事業評価の算定方法は、上記にあるように多数存在し、算定する人間によって算定結果が変わって来るため、絶対的な算定結果は存在しません。
そのため、確定的な企業価値評価・事業評価を下してくるM&Aアドバイザーがいたとすると、それは中小M&Aガイドラインに反した行動であり、信用性がない可能性が高くなります。
その場合は、顧問税理士などにも、企業価値評価・事業評価を依頼し、M&Aアドバイザーが算出した結果と比較するようにしてください。
また、他の専門家からの意見を参考にすること(セカンドオピニオン)を、禁止してくるM&Aアドバイザーも要注意です。
セカンドオピニオンを禁止する行為は、自己の意見以外の情報が売り手・買い手に入らないように画策している可能性も高いため、やはり信用性のないM&Aアドバイザーといえるでしょう。
譲り受け側の選定(マッチング)(15~17)
売り手側に係わる事項ですね。
M&Aアドバイザーが買い手候補を探索する際、簡易的な企業・事業情報を掲載した資料であるノンネームシートを使います。
買い手候補はこの情報を閲覧し、買い手側の実名開示(ネームクリア)の上、交渉の打診をします。
これを受け、M&Aアドバイザーは売り手の実名開示及び企業概要書や詳細資料を買い手に開示するわけですが、交渉打診を入れてくる先全てに情報を出すわけではありません。
交渉打診先の情報を精査し、アドバイザーとしての意見を付して売り手に実名開示及び交渉の可否を確認しなければいけません。
これは、買い手候補より交渉打診がある都度行います。
もちろん、事前に買い手との秘密保持契約を締結する必要もあり、情報漏洩防止に努める義務もあります。
これらがないがしろとなっているM&Aアドバイザーもやはり信用には置けず、それだけではなく、機密情報が漏れてしまうリスクも高くなりますので、要注意です。
交渉(18)
中小M&Aの全体像や今後の流れ、いわゆるM&Aプロセスについては、重要事項説明書に記載される事項となります。
これについてもM&Aアドバイザーから必ず説明を受けるようにして下さい。
デュー・ディリジェンス(DD)(19)
デュー・ディリジェンスとは、
デュー・ディリジェンスとは、買収監査とも呼ばれ、売り手企業から提供された資料に基づいて調査を行い、その会社の実態や問題点を監査すること |
です。
仲介契約の場合、また、FA契約でも売り手側のFAは、デュー・ディリジェンスを実施する事が出来ません。
なぜならば、デュー・ディリジェンスは、売り手側の調査のため、売り手と業務委託契約を締結しているM&Aアドバイザーが調査を行うと、売り手側に不利な情報を秘匿する可能性が高くなり、買収リスクを明確にすることができなくなるからです。
これは、仲介契約の場合、利益相反行為となるため、厳に禁止されています。
そのため、売り手側と業務委託契約を締結するM&Aアドバイザーは、買い手側及び調査人のデュー・ディリジェンスの協力(資料提出やヒアリング対応など)までと制限されます。
最終契約の交渉・締結(20~22)
冒頭、「20」「21」にある通り、M&Aアドバイザーは、 最終契約の締結までの期間において、譲り渡し側・譲り受け側の双方が可能な限り納得し、かつM&A 成立後に当事者間でトラブルが発生するリスクを低減した形で(低減の上でリスクが残る場合は、少なくともそのリスクを当事者が理解した形で)、最終契約が締結されるように支援しなければならず、最終契約後・クロージング後に当事者間での争いに発展する可能性があるリスクについて、最終契約の締結までの調整の実施や依頼者への説明を行わなければいけません。
近年、中小M&Aにおいてのトラブルも多発しております。
特に、買い手側の譲渡代金の未決済(または一部の支払いのみ)や、個人連帯保証の解除・変更の不実行など、契約の不履行も目立ちます。
これについての詳細を記載すると非常に長くなるので、また別の記事で投稿します。
クロージング(23)
M&Aの成約日、つまりクロージング日において、譲渡代金の決済と譲渡対象資産の引き渡しが実行されます。
一般的には、ここまでの段取りと着金の確認までが、M&Aアドバイザーの仕事となってきます。
クロージング日の段取りは、M&Aアドバイザーより必ず説明を受けるようにしましょう。
まとめ
以上、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守事項・支援の質の確保・M&A プロセスにおける具体的な行動指針(7~23)」についての解説でした。
非常に長くなってしまいましたね。
注意点などの詳細をもう少し解説したかったのですが、あまりにも長くなるため割愛した部分もあります。
これについては、個別論点として別の記事で解説したいと考えております。
さて次回は、続編となる
「不適切な譲り受け側の排除に向けた取組(24)」
「仲介契約・FA契約の契約条項に関する留意点(25~33)」
「仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策(34~41)」
「その他(42)」
の内容を解説しますので、次回記事もご覧いただけますと幸いでございます。
投稿する記事が、ご覧いただいてる中小企業経営者のみな様の安全取引や最良のM&Aアドバイザーの選定にお役立ていただけたら幸いでございます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
中小企業のM&Aは、売り手様・買い手様の一期一会のご縁によりご成約されるものです。
ご覧いただいている方に、良縁がありますよう祈念させていただきます。
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