中小M&Aガイドラインとは?
小規模M&Aアドバイザーが徹底解説
中小M&Aガイドラインとは?小規模M&Aアドバイザーが徹底解説!
今回は、「中小M&Aガイドライン」について解説します。
第三者承継(つまりM&Aのこと)について、ネットで色々と調べていると、「中小M&Aガイドライン」に関して書かれた記事に行きつくことはありませんか?
これに付随して、「中小M&Aガイドライン遵守宣言」や「M&A支援機関登録制度」という言葉も出てくることと思います。
弊社にM&Aのご相談をされるお客様には、「中小M&Aガイドライン」についてのご説明と、弊社が、「M&A支援機関登録制度」に登録された支援専門家であり、「中小M&Aガイドライン(第3版)遵守宣言(2024年9月より)」の内容についてもお話しさせていただいております。
この点に関して、これからM&Aをご検討されている方には、より深いご理解をいただき、M&A専門家(主にM&Aアドバイザー)の選定方法としてもお役立ていただきたいと思い、今回の記事を執筆した次第です。
今回の記事では、「中小M&Aガイドライン」に関して、基本的な部分について解説いたしますが、発展的な部分に関しては、随時記事を投稿して参りますので、継続してご覧いただけますと幸いでございます。
それでは、解説をはじめて参ります。
中小M&Aガイドライン
中小M&Aガイドラインとは?
まずは、「中小M&Aガイドライン」とは何かについて見ていきましょう。
中小M&Aガイドラインとは、
中小企業庁では、2015年3月に、M&Aの手続きや手続毎の利用者の役割・留意点、トラブル発生時の対応等を記載した「事業引継ぎガイドライン」を策定した。
その後、2020年3月には、後継者不在の中小企業のM&Aを通じた第三者への事業の引継ぎを促進するために、同ガイドラインを全面改訂した「中小M&Aガイドライン-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(以下「初版」という。)を策定してきた。
『中小企業庁』HPより引用
と、あります。
要は、中小M&Aガイドラインとは、中小企業の経営者が安全且つ安心して第三者への承継ができるような手引き書とも言えるもので、これにより中小M&Aの促進を図っているわけですね。
中小M&Aガイドラインの内容については、
(「M&A支援機関登録制度」に登録されている支援専門家に対して遵守宣言を求められた日) |
と、時代の変遷とともにバージョンアップされています。
次のセクションからは、初版から直近(2025年1月現在)の第3版にかけての内容について触れていきます。
中小M&Aガイドライン(初版)
前のセクションでも触れましたが、初版が中小企業庁より出されたのは、2020年3月のことで、これに伴い、「M&A支援機関登録制度」も創設され、初版の遵守宣言の要件を満たしたM&Aアドバイザーが、「M&A支援機関登録制度」に登録される支援専門家とされました。
M&Aアドバイザーの数は年々増加傾向ではありますが、中小企業にとって、適切なM&A支援をしているアドバイザーの判別は難しく、M&Aを躊躇する原因の1つとなっています。
躊躇する主な要因としては、
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が挙げられておりましたが、これらを払拭すべく中小企業経営者向けのM&Aへの手引きとして、
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など、中小M&Aに関する基礎的な知識や情報が広く開示されるようになりました。
参照:『中小企業庁・事業承継』に関するHP |
また、支援機関(M&Aを支援する業者などのこと。以下「M&Aアドバイザー」とします。)に対する基本指針については、
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などが、求められています。
ここで、M&Aアドバイザーに対する基本指針の趣旨について触れておきます。
近年、中小企業経営者の高齢化に伴い、中小企業のM&Aが盛んに行われていますが、これに伴い、M&Aアドバイザーも増加傾向にあります。
ここで問題となるのが、M&Aアドバイザーの支援内容と選定基準です。
実は、M&AアドバイザーがM&Aアドバイザリー業務(M&A支援のこと)を行うにあたり、国からの許認可等を取得する必要ありません。
つまり、M&Aアドバイザーを名乗れば、誰でもM&Aアドバイザリー業務を行えるということなのです。
「M&A支援機関登録制度」に登録されている支援専門家だけでもM&Aアドバイザーは大小含め、2,841件の専門家が存在します。(2024年12月17日現在)
(参照:中小企業庁HP『M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和6年度公募(11月分))について』)
M&Aアドバイザリー業務のサービス内容や料金体系については、M&Aアドバイザーによっても異なるため、この玉石混交状態の中から、最良のM&Aアドバイザーを選定する事は至難の業です。
そのため、中小M&Aガイドラインが策定・リリースされることで、M&A支援の基本的な事項や手数料の目安を示すとともに、M&Aアドバイザーに対して、適切なM&Aのための行動指針が提示されることとなりました。
これにより、数多くあるM&Aアドバイザーのサービス内容や料金体系等は異なれど、基本的な支援内容は均一化されることとなり、中小企業の経営者のM&Aアドバイザー選定の判断基準の役割も果たしているというわけです。(参照:『M&A支援機関登録制度』)
中小M&Aガイドライン(第2版)
中小M&Aガイドライン(初版)策定から約3年が経過したところで、第2版がリリースされました。
この3年間で、中小M&Aに関する行政・民間の取組にも一定の進展がみられ、中小M&Aは定着してきました。
その一方で、特に仲介・FA(フィナンシャル・アドバイザー)に関して、M&Aアドバイザーとの契約のわかりにくさや、M&A担当者による支援の質のばらつきや、手数料体系(いわゆるM&A報酬や最低手数料)のわかりにくさなどの課題が見受けられるようになってきました。
この課題に対応するため、第2版においては、特にM&Aアドバイザー向けの基本事項を拡充するとともに、中小企業向けの手引きとして仲介者・FAへの依頼における留意点等が拡充されました。
また、行政・民間における取組についても修正されたことがポイントとなります。
中小企業経営者向けのM&Aへの手引きの改訂個所として、
①仲介者・FAの選定:仲介業務・FA業務の特徴等の見直し ②仲介契約・FA契約の内容:直接交渉の制限に関する条項等、説明すべき重要事項の追加 ③セカンド・オピニオン:類型の整理、セカンド・オピニオンの利点と留意点 ④マッチングにおける支援機関の活用 ・依頼先の支援機関が単独/複数の場合の比較 ・適切な候補先の紹介を受けられない場合の対応 等 ⑤仲介者・FAの手数料の整理:最低手数料に関する事例の追加 等 |
が、挙げられます。
要は、中小企業の経営者がM&Aアドバイザーを選定する際の判断基準について、より深い情報が開示されたわけです。
また、M&Aアドバイザー向けの基本事項における改訂箇所としては、
①支援の質の確保・向上に向けた取組 ・契約に基づく義務の履行・職業倫理の遵守の必要性の明記 ・質の確保・向上のため個々の支援機関・業界に求められる取組 ②仲介契約・FA契約締結前の書面交付しての重要事項の説明 ・書面に記載して説明すべき重要事項の項目の見直し ・説明の相手方・説明者・説明後の十分な検討時間の確保 等 ③直接交渉の制限に関する条項の留意点 |
が、挙げられます。
これは、中小企業経営者とM&Aアドバイザーとの契約(アドバイザリー契約 つまりM&Aに関する業務委託契約のこと)に、齟齬が生じないような処置が取られたわけです。
特に、「②仲介契約・FA契約締結前の書面交付しての重要事項の説明」は最たるものですね。
また、行政・民間における取組の推進として、
①行政の取組 ・M&A支援機関登録制度・情報提供受付窓口の開始 ・事業承継・引継ぎ支援センターへの発展的改組 等 ②民間の取組 ・自主規制団体であるM&A仲介協会による苦情相談窓口の開始 ・表明保証保険 等 |
が、挙げられます。
「①行政の取組のM&A支援機関登録制度・情報提供受付窓口の開始」が行われたことは、中小企業経営者の保護がより厚くなったことが、よくわかります。
中小M&Aガイドライン(第3版)
2024年8月には第2版を改訂し、「中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」が策定されました。
第3版改訂では、M&Aアドバイザーが提供する業務の内容・質そして、その対価となる手数料(いわゆるM&A報酬や最低手数料。そして、今般より仲介の場合、相手方の手数料の開示もされることとなりました。)の額について、中小企業経営者向けに確認すべき事項を解説するとともに、仲介者・FAに対して求められる説明について追記されています。
また、第2版改訂時と同様にM&Aアドバイザーの支援の質を確保する観点から、仲介者・FAが実施する営業・広告に係る規律の明記や仲介者において禁止される利益相反事項の具体化が図られています。
さらに、譲り渡し側・譲り受け側の当事者間において、最終契約に定めた事項の不履行等のトラブルも発生している事が問題視されています。
特に、譲り渡し側の経営者保証の扱いについては、譲り渡し側の経営者保証を譲り受け側に移行させる想定であったにもかかわらず移行しない等の行為を行う譲り受け側の存在も指摘されており、注意が必要です。
これらを踏まえ、最終契約(株式譲渡契約等)において当事者間でトラブルに発展する可能性があるリスク、その対応策についてM&Aアドバイザーが説明するとともに、仲介者・FAに対して求める対応について追記されました。
これに加え、最終契約の不履行を意図的に生じさせるような不適切な譲り受け側を市場から排除するために、仲介者・FAに求められる対応についても追記されています。
第3版の内容としては、初版から第2版にかけては、中小企業経営者とM&Aアドバイザー及び、行政・民間機関への取り組みだったことに対し、第3版については、主にM&Aアドバイザー(M&Aプラットフォーマー含む)向けの内容に重点が置かれていることが大きな特徴と言えます。
主な内容は以下の7点となっています。
①仲介・FAの手数料・提供業務に関する事項
【中小企業(経営者)向け】 手数料と業務内容・質等の確認の重要性⇒納得できない場合は、他の仲介者・FAへの依頼、手数料の交渉を検討する 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)】 手数料((いわゆるM&A報酬や最低手数料。仲介者の場合、相手方の手数料を含む)の詳細、プロセスごとの提供業務の具体的な説明をすること。 ②広告・営業の禁止事項の明記 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)】 広告・営業先が希望しない場合の広告・営業の停止、M&Aの成立可能性や条件などについて誤解を与える広告・営業等の禁止 ③利益相反に係わる禁止事項の具体化 【仲介者向け(仲介契約となるM&Aアドバイザーのこと)】 追加手数料を支払うものやリピーターへの優遇(当事者のニーズに反したマッチングの優先実施、譲渡額の誘導等)の禁止。 情報の扱いに係わる禁止事項の明確化⇒これらの禁止事項は仲介契約書に仲介者の義務として定める必要あり。 ④ネームクリア・テール条項に関する規律 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)】 譲り渡し側の名称の譲り受け側への開示(ネームクリア)前の、譲り渡し側の同意の取得、譲り受け側との秘密保持契約の締結の徹底。 テール条項の対象の限定範囲の具体化・専任条項がない場合の扱いの限定。 ⑤最終契約後の当事者間のリスク事項について 【中小企業(経営者)向け】 最終契約・クロージング後の当事者間でのトラブルとなりうる事項の解説⇒専門家の支援を受けつつ、自らでも確認することの重要性 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)】 リスクの認識時、最終契約締結前等に、当事者のリスク事項についての依頼者に愛する具体的説明。 ⑥譲り渡し側の経営者保証の扱いについて 【中小企業(経営者)向け】 士業等専門家、事業承継・引継ぎセンターへの相談や経営者保証の提供先の金融機関等へのM&A成立前の相談の検討 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)】 上記の相談が選択肢となる旨の説明・相談する場合の対応、最終契約における経営者保証の扱いの調整。 【金融機関向け(銀行や信金、信組など)】 M&Aの成立前又は成立後に経営者保証の解除又は移行について相談を受けた場合の「経営者保証に関するガイドライン」に基づく対応。 ⑦不適切な事業者の排除について 【仲介者・FA向け(M&Aアドバイザーのこと)・M&Aプラットフォーマー向け(M&Aマッチングサイトなど)】 譲り受け側に対する調査の実施、調査の概要・結果の依頼者への報告。 不適切な行為にかかわる情報を取得した際の慎重な対応の検討。 業界内での情報共有の仕組みの構築の必要性、当該仕組への参加有無の説明。 |
第2版と比較しても、かなり内容が濃くなっているということが、お分かりいただけると思います。
特に「⑤最終契約後の当事者間のリスク事項について」「⑥譲り渡し側の経営者保証の扱いについて」「⑦不適切な事業者の排除について」などは、中小M&Aガイドライン(初版)が策定されたことにより中小M&Aの促進が図れた半面、M&A上の様々なトラブルも増えてきたという事を物語っているように感じますね。
近年では、M&A業務をM&Aアドバイザーに依頼せず、売り手・買い手間で直接の成約をすることも珍しくなくなってきましたが、この点に関しては、重々注意の上、安全取引で成約することを目指していただければ幸いです。
まとめ
以上、「中小M&Aガイドライン」についての解説でした。
今回は、「中小M&Aガイドライン」の変遷や基礎的な部分についてのみ触れてきましたが、今後はより深掘りした内容(特に第3版について)の記事を投稿して行こうと考えております。
投稿する記事が、ご覧いただいてる中小企業経営者のみな様の安全取引や最良のM&Aアドバイザーの選定にお役立ていただけたら幸いでございます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
中小企業のM&Aは、売り手様・買い手様の一期一会のご縁によりご成約されるものです。
ご覧いただいている方に、良縁がありますよう祈念させていただきます。
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